禁煙と喫煙の間

タバコに関するあれこれ

citariusの異常な愛情または私は如何にしてタバコをやめ、パイプを愛するようになったか

2016年10月23日に書いた日記の再録。某所にあげていたが、どうも場違いのようなのでこっちに移すことにした。


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タバコを吸わなくなってはや4ヶ月が経った。うむ、いい感じですね。なにがいいかって、タバコの支配を徐々に脱しつつあるのが実感できること。私はべつに禁煙をどこまでも押し通すつもりはない。タバコに生活を支配されるのが嫌なので、タバコそのものは嫌いにはなれない。なんといってもタバコの文化的重要性には無視できないものがありますからね。

そんなわけで、最近はパイプに親しむことが多くなった。多いといっても、数日おきにしか吸わないから、買ったタバコがいっこうに減らない。



タバコ(シガレット、紙巻タバコ)がなんでああも依存性が高いかといえば、添加物が多く含まれていることと、肺喫煙がよろしくないようだ。じっさい、同じくニコチン摂取といっても、燻らすだけのパイプタバコではまったくといっていいほど依存は生じない。何日吸わずにいても平気というのは、なんといっても気分のいいものだ。

まあパイプというのは、本気になって追求すると、いくつも超えなきゃならないハードルが出てくるらしいが、ちょっとだけニコチンを摂取する目的なら、とくに身構える必要はない。用意するのはパイプとタバコだけ。あとマッチをはじめいくつか小道具がいるが、そんなのはすぐに手に入る。

うまい人が吸うと一回で2時間くらい吸えるらしいが、2時間も煙を吸引していては体がもたない。よほど健康な人以外には薦められない喫煙法だ。私は10分で満足する。私の詰め方ではだいたい10分で火が消える。それだけでじゅうぶんだ。下の方に残ったタバコはフィルターだと思えばいい。

吸った後は小まめにパイプの手入れをする。これがまためんどくさく、パイプが一般に広まらない要因になっている。そういえば、火をつけるのにもマッチ3本はすらないといけない。シガレットのようにポケットから出してすぐ着火、というわけにはいかないのだ。

あらゆる意味でめんどくさいからこそ、つい億劫になって吸う回数が減る。これがいいのである。いつまでたっても喫煙が習慣として定着しないことが、ニコチン大魔王(というほどのキャラではないが)の支配を受けず、逆にこれを支配するための要諦なのだから。

というわけで、たまのパイプたばこは禁煙している人にもおすすめだ。癖にならない程度でニコチン摂取ができる。ただし、煙を肺に入れたら終りだよ。あっというまに喫煙常習者に戻ってしまうからね。

最後に私の好きな喫煙ソング「くすぶった男が(Fumeux fume)」を紹介しよう。アルス・スブティリオル屈指の名曲で、作者はソラージュ(Solage、14世紀の人)。題名どおり、くすぶったような曲調がじつによい。はじめて聴いてピンとこない人も、何度か繰り返し聴いてみてほしい。まるでニコチンのごとく、じわじわと効いてくるから。