禁煙と喫煙の間

タバコに関するあれこれ

ピエール・ルイスのタバコ小説

半世紀ほど前まで、タバコ本や喫煙エッセイといえばきまって引用されるものに、ピエール・ルイスの「新しい快楽」という短篇がある。ためしに古本屋へ行って、その手の本を探してみるといい。どこかに必ずルイスの名前は出てくる。戦前のタバコ文学の代表的なのは、まずこの作品だと思ってまちがいない。

現在では世界的に喫煙への締め付けがきついので、もうタバコ文学なんていうものは世に出ないだろう。そう思うと、この短篇は、今後二度とは現れない、ある種の極北のような作品だという気がしてくる。

さてその内容だが、ここで下手な筋の紹介をするよりも、ちゃんとした翻訳を読むほうがいいだろう。なにしろ古今に冠絶する(?)たばこ文学の金字塔なので、興味がある人は生田耕作の訳した「紅殻絵」を買うか、図書館で借り出すことをおすすめする。

これを読んで、なんだつまらんと一蹴するか、さこそと膝を打つか、その反応によって読み手の愛煙もしくは嫌煙の度合いが測られる、リトマス紙のような作品。