年に数回の喫煙はOKか?
私の母は、ふだんはタバコを吸わなかったが、親族の集まりなどの席で、年に数回、タバコを吸っている姿を見かけた。また、うちでもごく稀に、たとえば夫婦喧嘩をした後、どこからかタバコを一本手に入れて、寂しそうにくゆらせていることもあった。
彼女は喫煙者だっただろうか? 断じて否。なぜなら、明らかにタバコを楽しんでいなかったし、それが習慣化することもなかったから。
ここまで書いてきて気づくのは、もともとタバコが好きでない、もしくは合わない人にとっての喫煙は、酒が飲めない人がむりやり酒を飲まされるのと同じくらいの苦痛なのではないか、ということ。
一本でも吸ったらアウト、という禁煙原理主義は、タバコが好きな人間相手にしか通用しないし、それは当然のことだ。
私は母を思い出して、あんなふうに年に数回のタバコですむんなら、と思ったが、タバコ嫌いの母と、長年の喫煙の習慣に染まっていた私とでは、立場がぜんぜん違うことに気がついた。母のようになるためには、まずタバコが嫌いにならなくてはならぬ。しかし、タバコが嫌いになったら、どうしてそんなものを無理してまで吸う必要があるか?
というわけで、年に数回の喫煙、というのは「喫煙と禁煙の間」の選択肢から外されることになった。