禁煙と喫煙の間

タバコに関するあれこれ

夢の中の喫煙

喫煙者でも禁煙者でもない、その中間を目指すという私の意図は、まったくもって実現がむつかしいことに気がついた。タバコというのは、吸うか吸わないかのどちらかなので、その中間なんてものはないのではないか。そう思うようになった。

じっさいのところ、パイプも含めて、ここ数ヶ月、喫煙から完全に遠ざかっている。いうなれば完全禁煙だ。一般に禁煙とはこういう状態をさすのだろう。禁煙者としては申し分ないが、自分の目指す境地とはちがう。たとえば、週末のゆったりした時間に、パイプなりシガーなりをくゆらすのは私の夢だったし、それはけっして実現不可能というようなものではない。にもかかわらず、現実としては、どんどん完全禁煙者のほうへ近づいている。

そんな私が心置きなくタバコが吸える唯一の時空が、睡眠中の夢なのである。どういうわけか、夢のなかでは喫煙者に戻っていて、戻っていることに諦めを伴った安心感をおぼえている。やっと本来の自分に立ち戻ったような安心感だ。そして、夢のなかで吸うタバコのうまいことよ。起きているときはタバコの味なんて思い出しもしないし、できもしないが、眠っているときはそれがはっきり味覚、嗅覚に感じられる。意識的には忘れたつもりでも、無意識ではしっかり覚えているのだ。

いつかそのうち、タバコを吸ってる夢もみなくなるのかもしれない。そのときが、私とタバコの決定的な別れとなるだろう。