禁煙失敗談
最初に禁煙しようと思い立ったのはもう何年も前のことだ。きっかけは何だったか忘れたが、とにかく始めることにした。
数日して気がついたことは、タバコが吸いたくなる状況というのは、連続的もしくは瞬間的に緊張を強いられるときと、緊張から解放されたときのふたつ、それから一日のうちで強烈な吸魔がくるのはほぼ3回ほどであること。
こういうことに気づいてから、それじゃ一日3本だけ吸ってればいいんじゃない、と思って、じっさいそうしてみた。すると──
3本が10本になり、やがて20本と、元に戻るのは一週間かからなかったように記憶している。
こうして初回の禁煙は一週間ほどで失敗した。禁煙者のあいだでは「一本おばけ」というのが有名だが、たしかに一本だけというのは(3本だけに増やしてみても)危険な罠ではある。というのも、この一本おばけというやつ、一本のふりをしながら、そのあとには、数知れない不可視のタバコの群を引き連れているのだから。
禁煙の世界に一本だけとか、3本だけとか、そういうのはありえない。やめるならすっぱりやめるしかない。その限りでは、禁煙原理主義者どものいうことが正しい。ニコチンの支配を完全に振り切るまでは、われわれも原理主義者にならざるをえない。
しかし、いったん禁煙成功した後でも、なお原理主義にとどまる必要はあるのだろうか?
そのへんはまた後ほど触れてみたい。